3度目に、君を好きになったとき
「ね、結衣。そんなに落ち込むくらいならさ、他の男を紹介してあげようか」
自分の教室へ荷物を取りに戻った私は、未琴の励ましに顔を上げる。
「ありがとう。でも、いいよ私は。当分、誰のことも好きになれないと思うから」
後ろ向きな発言にも関わらず、未琴はめげなかった。
「じゃあ、まずは友達として紹介するよ。失恋のときは誰かと遊んで美味しいもの食べて、紛らわせるのが一番じゃない?」
サバサバと言った未琴は机の上に座るとメイク直しを始めた。
背中の真ん中ほどに伸ばした明るいブラウンの髪は、緩く波打っている。私と違って癖毛ではなく、巻いているのだと思う。
「そうかな。いつか、忘れられるのかな……」
こんなことなら、チョコに忍ばせた手紙に本当の気持ちを書けば良かった。
遠回しに『絵が好き』などと伝えずに、玉砕覚悟で『先輩が好き』と書くべきだった。
小心者の私は、先輩と部活が一緒だから、振られて気まずくなるのが怖くて想いを伝えられなかったんだ。
それが後々、後悔することになるなんて。