3度目に、君を好きになったとき
「み、見すぎって、誰をですか?」
慌てて蓮先輩から視線をはがし、声の主である千尋先輩を振り返る。
「お前ら、何なの? あれから全然進展ないよな」
私の隣に座ってきた千尋先輩は、蓮先輩の方を見ていて、誰のことを指しているのか明白だった。
「進展って……」
「じれったいんだよ。あんな思わせ振りな態度取られて、白坂は何とも思わないのか?」
「……先輩は、誰か他に忘れられない人がいるみたいで。だから、仕方がないんです」
「誰だよ、忘れられない人って」
千尋先輩は何も聞かされていないようで、訝しげに首をひねる。
「そんなことより。お前らがあの日、手を繋いで歩いてたのは見間違いじゃないんだよな?」
「え……それ、は……」
眼鏡の奥の鋭い瞳に見据えられ、目をそらしてしまう。
動物園で手を引かれて歩いていた所を、千尋先輩に目撃されていたなんて、何だか気まずい。