3度目に、君を好きになったとき

「僕は好きだよ、結衣の描く絵が」


優しくそう言われ、胸の中が温まっていく。


「柏木先輩、ちょっといいですか?」


村上さんにアドバイスを求められた先輩は、私の席からすぐに離れていったけれど。心の中は温かいままだった。





「白坂。帰るぞ」


画材を片付けていると、千尋先輩がやってきて帰り支度を急かしてくる。


「あっ、はい」


本当に私と一緒に帰るつもりなんだ。

急いで片付けを終わらせ、二人で廊下に出る。

他の部員や蓮先輩は、まだ部室の中だった。


蓮先輩は村上さんと話していて、私たちが部室を出て行くのを特に気にしていない風だった。


(……もう少し、気にして欲しかったな)


図々しくも、そんな願望が頭に浮かぶ。


歩き出してすぐに、千尋先輩のことを好きかもしれない未琴のことを思い出した。

二人で帰っている所なんかを見られたら、誤解される可能性が高い。

未琴には嫌われたくないから、さりげなく千尋先輩の一歩後ろを歩くことにした。
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