3度目に、君を好きになったとき
「僕は好きだよ、結衣の描く絵が」
優しくそう言われ、胸の中が温まっていく。
「柏木先輩、ちょっといいですか?」
村上さんにアドバイスを求められた先輩は、私の席からすぐに離れていったけれど。心の中は温かいままだった。
*
「白坂。帰るぞ」
画材を片付けていると、千尋先輩がやってきて帰り支度を急かしてくる。
「あっ、はい」
本当に私と一緒に帰るつもりなんだ。
急いで片付けを終わらせ、二人で廊下に出る。
他の部員や蓮先輩は、まだ部室の中だった。
蓮先輩は村上さんと話していて、私たちが部室を出て行くのを特に気にしていない風だった。
(……もう少し、気にして欲しかったな)
図々しくも、そんな願望が頭に浮かぶ。
歩き出してすぐに、千尋先輩のことを好きかもしれない未琴のことを思い出した。
二人で帰っている所なんかを見られたら、誤解される可能性が高い。
未琴には嫌われたくないから、さりげなく千尋先輩の一歩後ろを歩くことにした。