3度目に、君を好きになったとき
「じゃあさ、試しに俺と付き合うっていうのは?」
首の後ろに手が回され、そのまま引き寄せられる。
視界が千尋先輩の制服でいっぱいになり、大人っぽい香りに包まれて、変にドキッとしてしまう。
「ち……近いです、先輩」
焦って制服を押し返そうとした、そのとき。
「――千尋」
涼やかな、でも不機嫌そうな声が聞こえ、さりげなく千尋先輩のそばから逃げ出した。
(見られた……、蓮先輩に)
じっと彼が見据えているのは、親友である千尋先輩。
「結衣のこと、からかうのはやめてくれる?」
瞳の奥が、いつもより暗い。
「からかってるつもりはないけど?」
「…………」
蓮先輩は静かな眼差しで、探るように見つめている。
「――あ。俺、参考書買いに行かないといけないんだった」
突然、場の空気を変えるように千尋先輩が声をあげた。
「またな、白坂」
「えっ」
「蓮、俺の代わりに送っていってくれるよな?」
「……言われなくても、結衣は僕が送るよ」