3度目に、君を好きになったとき

「え、待ってた?」

「――あっ、すみません図々しくて」


うっかり口走ってしまい、熱くなった頬を隠すために両手で口元を覆った。


「いや。結衣の本音を聞けたみたいで、嬉しいよ」


そっと先輩の方をうかがうと、さっきまでの翳りはなく、私に向かって優しく微笑んでくれていた。


もっと先輩の笑顔をそばで見ていたいな……

そんな思いが浮かぶ。


ベンチに座る私と蓮先輩の間は、子ども一人分空いていて。

もう少し距離を縮めたいのに、その勇気がないのが悲しい。


そんなことをしたら、先輩、驚くだろうな。

嫌われたら困るので、もちろん実行はしない。

『好き』と伝えてみたい気もするけど、今の関係が心地よいから、まだ私だけの秘密だ。


「今度の土曜日、午後から空いてる?」

「午後ですか? 空いてます」

「良かったらピアノのコンサートに行かない? 親からチケットもらってるんだ」

「ピアノ……行ってみたいです」
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