3度目に、君を好きになったとき

「白坂さん……だったよね。私、あなたに良くない噂があるの、聞いちゃった」


ドク……と、心臓が重く揺れる。


「あんな目に遭ったはずなのに、どうしてまだ蓮のそばにいるの? お願いだから、蓮に近づかないでくれる?」


真正面から見据えられ、この場から逃げ出すことは許してくれそうもなかった。


「わかるでしょ? あなたがそばにいると蓮は迷惑するの。周りからも嫌われて、」

「──結衣。行こう」


何かを言いかけた三井先輩を遮り、蓮先輩が私の手首を引いた。

普段とは違う強引な力が、三井先輩のきつい口調と視線から逃してくれる。


「蓮!」


そう呼び止めた彼女が追ってくることはなく、私たちはそのまま無言で校舎をあとにした。





「三井の言ったことは気にしなくていいから」

「……はい」


手首をそっと放した先輩が、前を向いたまま、私の半歩先をゆっくりと歩く。


たぶん蓮先輩は、私が自分の過去を隠したがっていると知っている。

三井先輩の発言から、そう感じた。
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