3度目に、君を好きになったとき

先輩の優しさを使って騙した、そんな罪悪感に胸が締めつけられながらも。

今にも離れそうだった彼の手を、自ら触れて引き止めた。

彼の驚いた顔を一瞬視界に入れつつ、通路の端に立つ沢本君の強い視線を受け止める。


その途端、脳裏に何かが滑り込んでくる気配がした。


それは、過去の記憶だった。


頭の中に流れてくる、夕焼け色の映像。

大きなキャンバスの前で私と蓮先輩が話している。



『この絵を描き終えたら、伝えたいことがあるんだ。だから……』



最後の方が聞こえないまま場面が変わり、次に流れてきたのは男の声だった。



『こんなヤツ、好きになるわけないだろ。こんな──嫌われてる女なんか』



鋭く、きつい言葉が私の胸を突き刺した。


そうだ……思い出した。

私は中学時代に、この言葉を投げつけられたことがある。



誰だって、周りから嫌われている人間をわざわざ好きになったりしない。

だから先輩も、私が嫌われていた事実を知ったら。

手のひらを返したように冷たくなるはず。


それを私は、ずっと恐れていたんだ。


心の奥底で、過去に言われたあの台詞がトラウマとなっていたから──。


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