3度目に、君を好きになったとき
6.白昼夢の罠
あの男の声は、沢本君の声に似ていたと思う。
沢本君は、想像している以上に私の過去に関わっているらしい。
私が体調不良なのではと心配した蓮先輩は、家まで送ってくれた。
過去を思い出すためとはいえ、先輩の腕をつかんでしまったこと、不審に思われていないといいけれど……。
*
そして真鳥と約束した月曜日が来た。
今日こそ、全ての記憶を取り戻す。
本当の自分を知るのは怖くてたまらないけど、周囲からの視線を気にしながら生きるよりはずっといい。
朝、教室へ向かう途中、廊下の奥から沢本君がこちらへ歩いてくるのがわかり、体が凍りついた。
またあの鋭い目を向けられ、話しかけてきたらと思うとゾッとする。一刻も早くどこかに隠れないと。
「白坂さん、おはよー」
そのとき、後ろから椎名さんが声をかけてくれたおかげで、沢本君はそれ以上私に近づくことはなく、教室へ入っていった。
「おはよう、椎名さん」
もし、沢本君が私の過去を話して、椎名さんにまで嫌われたら。
もう、こんな気さくに話しかけてくれることはなくなるんだろうな。
切ない気持ちを抑え、笑顔を作る。