3度目に、君を好きになったとき
6.白昼夢の罠


あの男の声は、沢本君の声に似ていたと思う。

沢本君は、想像している以上に私の過去に関わっているらしい。


私が体調不良なのではと心配した蓮先輩は、家まで送ってくれた。

過去を思い出すためとはいえ、先輩の腕をつかんでしまったこと、不審に思われていないといいけれど……。





そして真鳥と約束した月曜日が来た。

今日こそ、全ての記憶を取り戻す。

本当の自分を知るのは怖くてたまらないけど、周囲からの視線を気にしながら生きるよりはずっといい。


朝、教室へ向かう途中、廊下の奥から沢本君がこちらへ歩いてくるのがわかり、体が凍りついた。

またあの鋭い目を向けられ、話しかけてきたらと思うとゾッとする。一刻も早くどこかに隠れないと。


「白坂さん、おはよー」


そのとき、後ろから椎名さんが声をかけてくれたおかげで、沢本君はそれ以上私に近づくことはなく、教室へ入っていった。


「おはよう、椎名さん」


もし、沢本君が私の過去を話して、椎名さんにまで嫌われたら。

もう、こんな気さくに話しかけてくれることはなくなるんだろうな。

切ない気持ちを抑え、笑顔を作る。
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