3度目に、君を好きになったとき
帰りのSHRが終わり、教室を出ようとした私は、未琴に呼び止められた。
「結衣! 真鳥と進展あったの?」
「進展……? 何のこと? 特にないけど」
私が首をかしげると、未琴は内緒話をするように耳元で囁いた。
「だって、真鳥にキスされてたでしょ」
「キ……、え!?」
思いもかけない発言をされ、目を剥いた。
そんなわけがない、真鳥とは男女の関係では全くないんだから。
「赤くなってるー、あやしーい」
「何かの間違いじゃない? 真鳥がそんなことするわけないし」
「隠さなくてもいいんだよ。はたから見たら、けっこうお似合いだったし」
「だから隠してないって」
「ふーん。だったら、角度的にキスしてるみたいに見えただけなのかな」
「そうだよ……! たぶん、それだと思う」
もしかしたら、目眩がしたときに支えてくれた、あの場面がキスしていたように見えたのかも。
それでも、未琴に指摘されるうちに、真鳥に何かされた気がしてくるのは、思い違いなのだろうか。
背筋にじわりと冷や汗がにじむ。
「でもね、真鳥はおすすめだよー」
「そう、かな……?」
そこまで嫌いなタイプではないけれど、恋愛対象になるかと言われたら難しい。
だって私の好きな人はただ一人。
…………え?
誰、だった?
今頭の中に思い浮かべようとした人は。