3度目に、君を好きになったとき

「この辺りの色使いが、特に好きです」


先輩の大事な絵だから、触れるつもりはなかったのに。

淡い薄紫が塗られた部分に、うっかり指先が触れた瞬間――。


電流が走ったかのように頭が真っ白になった。


――そして、脳裏に映像が浮かび上がる。

バレンタインの日。三井先輩が蓮先輩に、抱きついているシーンが。


微かに頭痛を覚えた私は、こめかみに指を当てる。


忘れたままでいたかった。

蓮先輩が他の女の人と親しくしている姿なんて。

できることなら、二度と思い出したくはない。


この胸の痛みが示しているのは、片想いの切なさ。

もしかして私は、蓮先輩のことを……?




思い当たった一つの結論。

一度意識してしまうと、蓮先輩の顔を見れなくて。

彼の視線が自分に向けられていると感じると、それだけで頬が熱くなっていく。



「どうしたの? 具合でも悪くなった?」

「いえ……大丈夫、です」


心配そうに顔を覗き込まれ、慌てて首を振る。


「この絵を見ていると、なぜか懐かしくなって。すごく癒されたんです。完成したら、また見せてくださいね」


私がそう声をかけると、先輩は曖昧に笑った。

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