3度目に、君を好きになったとき
「真鳥とのことは、その……事情があって」
「……事情」
不本意だったことを強調したつもりなのに、先輩の表情は硬いままだ。
それは当然、仕方のないことで。
不意打ちとはいえ、嫌なら真鳥のそばから逃げ出せば良かったのだから。
……そうしなかった理由は、なぜだか思い出せない。
鈍い頭痛がして、何かに邪魔をされている気分だ。
話を終わらせようとするかのように、蓮先輩が立ち上がり、淡い紫に染まり始めた空へ視線を向けた。
「暗くなってきたね。……送るよ」
まだ先輩のそばにいたい気持ちはあったけれど。
未琴の言葉を思い出し、そんな雰囲気になる前に帰った方がいいのかもしれないと感じた。
だから素直にうなずき、部屋をあとにした。
未琴が言っていた、三井先輩との噂が本当なのかどうか。
これ以上、重い空気になるのは耐えられなくて、蓮先輩に確かめることはできなかった。