3度目に、君を好きになったとき
「待って、お願い! 少しだけでいいから」
追いかけてきた三井に、制服をきつく両手でつかまれて、仕方なく立ち止まる。
「また、あの子のところに行くの?」
物置小屋の陰に引き戻され、結衣の姿が視界から消えた。
焦りが募っていく。
「蓮があの子に失恋して、私と付き合ってくれてたときも。形だけ……だったよね。
たまに一緒に帰ったり、廊下で話したりするだけ」
確かに、形だけだった。
彼女の家に上がったことすらない。
好きという気持ちはなかったから、どこかで一線を引いていた。
「蓮の心の中には、ずっとあの子の存在が残ってるって、本当は気づいてたよ」
「……」
「私じゃ駄目? どこが駄目? あの子のところに戻ってほしくない。もう、蓮には傷ついてほしくないの」
微かに声が震えている。
涙をこらえているようにも思えた。
「蓮は何回、あの子に傷つけられれば気が済むの? 時間の無駄だと思わないの?」
「自分が傷ついても、関係ない」
結衣を想うことが時間の無駄だなんて、思ったこともない。
「ごめん。悪いけど、結衣の所に行くから」
それを聞いた彼女の表情が歪み、制服を掴んでいた彼女の手から力が抜ける。
その隙に、今度こそ結衣のいる場所へ向かった。
***