3度目に、君を好きになったとき
椎名さんの言葉を受け止め、しばらく沢本君は呆然と地面を見つめ続けていたけれど。
ふと顔を上げ、何かに気づいたように目を見開いた。
「あ、あいつ……」
彼の視線の先を辿ると、蓮先輩と……その後ろの方に三井さんがいた。
「足止めしてくれてたんじゃなかったのかよ」
「沢本! いいから早く、その子を連れていって」
きつい口調で三井先輩が命令する。
いつもの凛とした綺麗な顔に、今日は険しさが滲み出ていた。
彼女の命に従い、沢本君は私の手首をさっと掴む。
一瞬のことで、逃げる暇も与えられなかった。
三井先輩は、沢本君と何か関係があるの……?
「結衣」
蓮先輩が私の名前を呼び、一歩踏み出すのを遮るように、三井先輩が声を張り上げる。
「あの子は、蓮に好意があるふりをして、二股をかけていたの。他の男のことも好きだった。――ずっと騙されていたんだよ、蓮は」
腕を組んだ三井先輩は私を見て、愉しそうに嗤っている。
「まさか、純粋そうな顔をして、いろんな男をたぶらかしていたとはね」
蓮先輩と目が合ったものの、三井先輩の迫力に負け「違います」とは言い出せず、唇を噛みしめる。