3度目に、君を好きになったとき
「――とりあえず、戻ろうか」
「はい」
蓮先輩にそっと肩を押され、校舎へ体を向けたそのとき。
「真鳥と、……未琴?」
椎名さんの怪訝そうな声が聞こえ、すぐに足を止める。
ちょうど沢本君たちと入れ違うように、足早に近づいてくる二人の姿が目に入った。
「真鳥……、早く!」
苛立ちを隠さない未琴が、斜め後ろを歩く真鳥へ叱責している。
表情を曇らせた蓮先輩は、私の方をちらりと振り返った。
「――柏木先輩」
感情の読めない瞳で、真鳥が私たちのそばへたどり着く。
「白坂のこと、借りてもいいですか。ほんの、少しだけでいいので」
私の額の辺りへ手をかざす仕草に、なぜか恐怖をおぼえる。
「嫌……、私は行きたくない」
震える声で拒絶を表すと、彼の後方から未琴が強い口調で叫んだ。
「真鳥! いいから、結衣が思い出す前に、早く……!」
「わかってる」
すっとこちらへ伸ばされた真鳥の指が、私の前髪に触れる直前。
それよりも先に、蓮先輩が私のことを強く抱きしめた。
まるで、誰にも触らせたくないと示すように。