3度目に、君を好きになったとき

「ごめんね。結衣」


なぜか謝罪の言葉を口にする蓮先輩は、自分の肩口に押しつける形で私を抱き寄せていた。


「もう、忘れなくていいから」


忘れなくて、いい……。


身に覚えがないはずなのに、泣きたい気分になる。

さっきよりも密着部分が増えて、安心する香りと先輩の熱をより感じた。

私も片腕を、彼の制服へ遠慮がちに添える。



一瞬だけ、真鳥と目が合ったあと……。

蓮先輩の肩越しに、空が見えて。


その色が、いつか見た淡い青紫と同じ色だったことに気がついた。

記憶が重なり、奥に隠れていた感情が蘇る。



「…………」



すべて――、思い出した。



『……約束だよ』


『また、あの空を一緒に見ることができたら。
この絵を完成させよう』



中学2年のときに交わした、蓮先輩との大切な約束。

先輩の誕生日にチーズケーキを作って、一緒に食べて幸せだったこと。

彼が卒業する間近に告白されて、断ったときの痛みさえも……。



濁った水たまりみたいだった頭の中が、一瞬で透明感を取り戻した気分だった。



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