3度目に、君を好きになったとき
真鳥に戦意がなくなったことを確認したためか、蓮先輩は私を抱きしめていた腕をほどいた。
「結衣の記憶を消したのは、どうして?」
普段は穏やかなはずの空気を隠し、やや厳しい目つきで真鳥へ尋ねる。
「えっ……」
「何で、それを?」
未琴と真鳥が焦りを含んだ驚きの声を上げる。
「ずっと前から違和感があったんだ。今思えば、結衣が真鳥君に会ったあと、何度か不自然に物事を忘れていたから」
「それは……」
ばつが悪そうに目を泳がせたあと、真鳥は観念したのか重い口を割り始めた。
「言い訳に……なるけど。沢本は中学時代、素行のよくない奴とつるんでて。それで白坂を自分の代わりに呼び出してくれって、命令してきたから……何となく断われなかった」
そういえば、あの頃の沢本君は誰も逆らえない雰囲気を出していた。
それでも、常にカースト上位にいる人たちとの仲は悪かった気がするけれど。
「たまたま一緒にいた永野も、見張りを頼まれて。白坂と沢本を密室にさせた」
「……」
記憶の底に封じ込めておきたかった、嫌な記憶がよみがえる。
真鳥に指示された場所へ行くと、一番苦手な沢本君が待ち伏せしていた……。