3度目に、君を好きになったとき

「僕は好きだよ、結衣のこと」


さらりと言われ、息をのんだ。


「何度かあきらめようとしたけど、気づいたらまた好きになっていた」


まさか……、まだ好きでいてくれているなんて。


「もう一度、あのときの返事を聞かせてくれる?」


深みのあるセピア色の瞳が、少しだけ不安げに揺れている。

中学のときは怖くて言えなかった言葉を、私は思い浮かべた。

一瞬だけ夕陽を目に映して緊張を紛らわせてから、深呼吸をし、先輩と視線を合わせる。



「蓮先輩のこと、好きです。何度も忘れようとしたけど、いつの間にかまた好きになっていました。ずっと……、好きでいてもいいですか?」


必死に気持ちを伝えようとしていたら、目尻から涙が零れていった。


「……うん。好きになってくれて、ありがとう」


蓮先輩の指が頬の曲線をたどり、涙を掬ってくれる。



あの頃、心の片隅に残っていたのは、先輩の手のひらの温かさだった。

人間関係で悩んでいた私の髪を撫でてくれたことを、今になって思い出した。

その温かさに、どれだけ救われたか――。



思えば、最初から蓮先輩を信じてさえいれば、こんなふうにはならなかったのかもしれない。

嫌われることが怖くて。
すぐにあきらめがちで。

本当の自分を知られたら、全ての人が私を嫌いになると思い込んでいた。

未琴や三井先輩のように。



でも、中には蓮先輩や椎名さんのように、嫌いにはならないと言ってくれる人もいた。

だから、これからもっと自分自身を好きになるための努力をしていこうと……心の奥で誓った。

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