3度目に、君を好きになったとき

気持ちを伝え合ったあと、離れるのが惜しくてしばらく空や川を眺めていた。

水面にはキラキラとオレンジ色の光が反射している。


「――約束の、絵」


綺麗なグラデーションを作る空を隅々まで目に焼き付けながら、私はぽつりとつぶやいた。


「続きを早く、描かないと」

「結衣……。思い出してくれたんだね」


私たちは視線を合わせると、手をつないで先輩の家へ急いだ。

儚い夕陽が消えてしまう前に。





絵筆を握るのは久しぶりだった。

蓮先輩の家の広いバルコニーでイーゼルを立てかけ、約束の絵を描くことになるなんて想像もしていなかった。

まず、両想いになれたことが奇跡なのだから。



先輩の部屋で見つけた未完成の空の絵。

あれは、蓮先輩と私の二人の絵だったのに。

あのときは全く思い出せなかったのが不思議なくらいだ。


『完成したら、また見せてくださいね』だなんて他人事みたいに言って。どれだけ困らせたことだろう。


今までずっと、忘れていてごめんなさい。

その気持ちをこめて、先輩の描いた絵を汚さないように、慎重に色を乗せる。


私はプランターに咲く花を。

先輩は頭上に広がる空を見本にして。

厚みのある真っ白な紙に少しずつ命を吹き込んでいく。


左隣に座る蓮先輩は、パレットに淡い青や薄紫色を作ったり、丁寧に絵筆をすべらせたりしていた。

その横顔は真剣で、思わず見惚れているうちに艷やかな唇が目に入り、慌てて視線をそらす。


中学生のときに告白された時間も、空一面が夕焼け色に染まっていた。

断りの返事をしたあと、最後に先輩と……。

想像すると、燃えるように頬が熱くなった。
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