3度目に、君を好きになったとき
1.その空に憧れる

美術室は校舎の北側にあり、窓からグラウンドを見渡せる位置にあった。

重いドアを開けて中に入っても何の気配もなく、まだ誰も来ていないようだった。


いつもの自分の席へ向かおうとしたとき、窓際に立て掛けられたキャンバスに気がついた。

そこには途中まで描かれた絵があった。

それを見て、すぐに誰の絵なのか私にはわかった。


柏木先輩の、空の絵だ。

水彩で描かれた、淡い水色と薄紫の繊細なグラデーション。


中学のときに美術部に入ってから、柏木先輩の描く絵がずっと好きだった。

それは高校に入った今も変わらない。


「――白坂さん?」


優しく背後から呼びかける声にハッと我に返る。


「……あ。柏木先輩」


先輩に声をかけられて、振り向いた私は自然と笑顔になっていた。


「この絵、もうすぐ完成ですか?」

「うん。あと少しかな」


ベージュのブレザーを脱ぎ、椅子の背もたれに掛けた先輩は、絵の具やパレットの準備を始める。

白シャツにオリーブグリーンのニットを重ねたその姿もよく似合っていた。
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