3度目に、君を好きになったとき
嫌だと断ればきっと、先輩は優しいからそれ以上は求めてこないはず。
けれど私にはそれを断る理由はなく、先輩の整った顔がそっと近づいた。
わずかに顔を傾け、一瞬だけ掠めるように唇が触れ合う。
指先と同じで、冷えた――柔らかな唇。
先輩と私の、最初で最後のキスだった。
私の瞳から涙が零れ落ちていく。
何の涙だろう。自分でもわからない。
「じゃあ、元気で。……幸せになってね」
背を向けて去って行く先輩。
一度も振り返ることはなかった。
その背が見えなくなるまで、ずっと私は先輩のことを見送っていた。
*
*
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(……なんで私、先輩のこと振ってるの?)
聞き慣れたアラームの音で夢から覚めた途端、まず始めに思ったのはそれだった。
先輩は傷ついて切なそうな目をしていたのに。
夢の中とはいえ、どうして断ってしまったんだろう。
あのとき、先輩からの告白にうなずいていれば。
先輩は優しく笑ってくれたかな。
私の大好きな……、彼の本当の笑顔が見たかった。