3度目に、君を好きになったとき
思えば今日はホワイトデー。
一ヶ月前に義理チョコを渡した記憶は、何となくある。
わざわざ、そのお返しを用意してくれたなんて。
「ありがとうございます。嬉しいです」
両手で受け取った私は笑顔でお礼を伝えた。
先輩からもらった物なら、何でも嬉しいと思えてくる。
「――良かった。断られるかと思った」
ホッとしたように先輩が小さく息をつく。
(え……?)
先輩からのプレゼントを断るはずなんてないのに、と私は首を傾げた。
「白坂さん、今日は何を描くの?」
「私は……、今は特に描きたいものがなくて。悩んでいるところです」
「それなら、今度一緒に題材を探しに行こうか」
柏木先輩はおっとりとした口調で提案する。
「題材、ですか?」
「そう。いろんな場所に行けば、刺激を受けて良い絵が描けるかもしれない」
「いいですね、私も探しに行ってみたいです」
「春休みでも良ければ、行ってみようか」
「はい。楽しみにしてます」
頷いた私に向けて、嬉しそうに目を細め甘く微笑むものだから、頬がさらに熱を持つ。