3度目に、君を好きになったとき

光の加減でセピア色に見える、サラサラとした癖のない髪。

ゆっくりと瞬きをする、涼しげな切れ長の瞳。

見つめれば見つめるほど、心音が速まっていく。


(でも、先輩は彼女がいるはずなのに、いいのかな……?)


甘い空気を、そんな小さな疑問が破る。

二人きりで、という意味ではなかったのかもしれない。
他にも部員はいるのだし。


「白坂さん……」


私の頬の辺りへ手を伸ばし、先輩が何かを言いかける。

指先が頬へ届きそうになったとき――。


「こんな所でイチャつくなよ」


刺々しい声で美術室に入ってきたのは、凝ったデザインのシルバーフレームの眼鏡をかけ、冷たい目をした千尋(ちひろ)先輩だった。


私は慌てて柏木先輩から距離を置く。

けれど柏木先輩は焦った様子は見せず、微笑みながら千尋先輩を振り返った。


「千尋、羨ましいって正直に言っていいんだよ?」

「阿呆か。こっちは彼女と別れたばっかりだっていうのに、見せつけるな」

「また別れたんですか?」


呆れた私は思わず口を挟む。
< 22 / 182 >

この作品をシェア

pagetop