3度目に、君を好きになったとき
光の加減でセピア色に見える、サラサラとした癖のない髪。
ゆっくりと瞬きをする、涼しげな切れ長の瞳。
見つめれば見つめるほど、心音が速まっていく。
(でも、先輩は彼女がいるはずなのに、いいのかな……?)
甘い空気を、そんな小さな疑問が破る。
二人きりで、という意味ではなかったのかもしれない。
他にも部員はいるのだし。
「白坂さん……」
私の頬の辺りへ手を伸ばし、先輩が何かを言いかける。
指先が頬へ届きそうになったとき――。
「こんな所でイチャつくなよ」
刺々しい声で美術室に入ってきたのは、凝ったデザインのシルバーフレームの眼鏡をかけ、冷たい目をした千尋先輩だった。
私は慌てて柏木先輩から距離を置く。
けれど柏木先輩は焦った様子は見せず、微笑みながら千尋先輩を振り返った。
「千尋、羨ましいって正直に言っていいんだよ?」
「阿呆か。こっちは彼女と別れたばっかりだっていうのに、見せつけるな」
「また別れたんですか?」
呆れた私は思わず口を挟む。