3度目に、君を好きになったとき



画材の片付けをしていたら、ふと気づけば皆、帰り支度を終えていて、すでに廊下へ出てしまっていた。

残るのは私と柏木先輩だけ。

わざと遅く片付けていたわけではないのに、二人きりのこの状況が気恥ずかしい。

村上さんや千尋先輩も先に帰ったようだ。
何となく柏木先輩と同時に部室を後にする。


「白坂さん。今日はこのあと、少し時間ある?」


静かな廊下を歩いていたら、先輩がふと思いついた風に訊いてくる。


「はい。特に用事はないです」

「近くにカフェができたみたいなんだけど、良かったら一緒に行ってみない?」

「……え、行ってみたいです」


思いがけないお誘いに、ためらいつつも返事をする。


「チーズケーキが一番人気があるみたいなんだ。白坂さん、好きだったよね?」

「はい、大好きです」


チーズケーキが好物だなんて、先輩に教えたことあったかな。


内心不思議に思いながら、とりあえず合わせておく。

きっと千尋先輩辺りから聞いていたのだろう。


「先輩は甘い物、大丈夫なんですか?」

「……うん。わりと好きだよ、甘い物」


少し間があってから、ゆっくりと言葉を選ぶように答えた。
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