3度目に、君を好きになったとき
「誰かと思ったら柏木か。珍しく怖い顔してるな」
同級生の姿を目に留めた藤川先輩は、面白そうにクスリと笑う。
「白坂さんの腕を掴んでいたから、良くないことを吹き込んでいるのかと思って」
口元は笑っているのに、まるで睨み合うように生徒会長と対峙する柏木先輩。
藤川先輩の方が目つきが鋭くて怖かったけど。
柏木先輩も負けてはいない。
冷え切った瞳が、いつもの優しい表情とのギャップを醸し出し、その分迫力が増して怖かった。
「生徒会に誘っていただけだ。そんなに冷たい顔しなくても、勝手に彼女をさらいはしないって」
ちらりと私へ視線をよこした藤川先輩は、軽く肩をすくめる。
「悪いけど、この子はあげないよ。僕の大事な子だから」
絶対に渡さないとでもいうように、柏木先輩が私の肩を力強く抱き寄せた。
『大事な子』って……。
私を助けるためだとしても、つい意識してしまう言葉だ。
頬がカッと熱くなり、せわしなく胸の奥が騒ぎ出す。
「ふーん……、柏木のお手つきなら遠慮するかな。他さがすわ」
小さく笑みをこぼした藤川先輩は、途端に興味を失ったらしく。私のことは見ずに、柏木先輩を一瞥してから二年の教室の方へ去って行った。