3度目に、君を好きになったとき

なぜ沢本君がそのことを知っているのか、わからない。

だけど、私はそれでも柏木先輩のことが好きだ。

片想いでもいい。

少しでも彼のそばにいられるのなら、振り向いてもらえなくていい。



「他に好きな人がいてもいいの。先輩のそばにいられるうちは、それでじゅうぶん幸せだから」

「何で……、何でだ?」



私の言葉を聞いた沢本君は、顔色を変えジリジリとこちらへ詰め寄ってきた。

手首を痛いほど捕まれ、顔をしかめる。


「さ、触らないで……」


嫌悪感を覚え、わけもなく体が震えてくる。


「どうして、あいつじゃないといけないんだよ……」


絞り出したような悲痛な叫びが、静まり返った廊下に響く。



「何で、いつもいつも……同じ男を好きになるんだ?」


「――え?」



何を、言っているの?

私はこの前初めて、先輩のことを好きになったはず。

沢本君が何か勘違いをしているのだろうか。



私へ視線を置きながらも、虚ろになっていく彼の不気味な瞳。

恐怖を感じ、強く捕まれた手首をそのままに後ずさった。
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