3度目に、君を好きになったとき

けれど、冷えた壁に背中が当たり、すぐに逃げ場を失ってしまう。


「白坂……」


舐めるような視線が私の胸元へ落ちていく。


「やっ……、やだ……」


恐怖で体が凍りつき、唇からかろうじて拒絶の言葉が出た瞬間、沢本君に黒い影が差す。



「――何やってるの? 嫌がってるんだから、やめたら?」


落ち着いたアルトの声が降りかかり、反射的に沢本君が私から離れる。


沢本君の肩越しに見えたのは、背の高いショートカットの女の子。

──椎名緋彩(ひいろ)さんだった。


ほっとしたあまり目尻から涙がこぼれそうになり、周りに気づかれないうちに目をこする。



「あのさー、沢本。恥ずかしくないの? 嫌がる子を無理やり自分の思い通りにしようなんて」


彼女は沢本君のことを知っているらしく、呆れた眼差しを投げつけた。


「うるせぇな、邪魔すんなよ」


沢本君は私を一睨みしたあと、背を向けて私たちから離れていく。
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