3度目に、君を好きになったとき
千尋先輩とは反対側──私の右隣に立っているのは、ついさっきまで村上さんと話していたはずの柏木先輩。
薄く微笑みながらも、穏やかとは言いがたい瞳で私達へ視線を落としていた。
今の会話を聞かれていなかったかと、額に汗が滲む。
「白坂さんのこと、いじめないでくれる?」
「……別に白坂は、お前のじゃないよな」
私を間に挟みながら、二人は冷ややかにも見える笑顔を交わす。
「そうだね。僕のものではないけど、泣きそうな顔をしているみたいに見えたから、放っておけなくて」
「あ、あの。私なら大丈夫ですから」
喧嘩になりそうなほどの空気に耐えきれず、おずおずと口を挟む。
柏木先輩はゆったりと私の椅子の背もたれに片手をつき、身を屈め囁いた。
「千尋に泣きついたことがあるって本当?」
「あ……」
やっぱり途中から聞かれていたみたい。
「千尋じゃなくて僕に相談して欲しかったところだけど……僕には言えないことだったのかな」
どことなく陰を含んだ声が、すぐ近くから届く。
微かに先輩の香りまで漂ってきて、心拍数が上がっていく。