3度目に、君を好きになったとき
一瞬ちらっと見えた先輩の顔は、どこか切ないもので。
自分の知らないところで先輩を傷つけているという事実に、胸が痛んだ。
「──あれ? 取り込み中だった?」
柏木先輩への返答に困っていたとき、ふっと割り込んできた声があった。三人で美術室の入り口へ顔を向ける。
よく知った声のその子は、長い髪をサイドで緩く編んだ永野未琴だった。
未琴は美術部ではないけれど、部活見学と称して、よくここに遊びに来る。
今日もそのノリで来たのか「こんにちはー」と他の先輩方に挨拶したあと、私の向かいの席へ腰を下ろし細長い足を組んだ。
柏木先輩も一旦自分の席へ戻ったあと、すぐにスケッチブックを持って私の右隣に落ち着く。
左隣の千尋先輩はマイペースにノートパソコンを開いていた。
「内緒の話なんだけど」
声を潜めた未琴が、私の方へ身を乗り出す。
「さっき、うちのクラスの担任に聞いたら、2年のクラス替えは私と結衣、同じクラスにしてくれるって」
「本当?」
今のクラスは、中学のときからの友達があまりいなくて馴染めなくて。次のクラスは少しでも仲の良い子が多ければ、と願っていたところだった。