3度目に、君を好きになったとき

「アザラシの赤ちゃん、産まれたばっかりなんですって」

「……何?」


急に千尋先輩の目の色が変わる。


「俺も行く」


見かけによらず、可愛いものに目がないらしい。


「ふふ、他にあと二人くらい誘っておきますねー」


土日は特に混むらしく平日に行くことになり、私は今から着ていく服に頭を悩ませることになった。





部活後の夕暮れ時。

私と柏木先輩は昇降口で暗い雨雲を見上げていた。


「あ……みぞれ、ですね」


空から降ってきていたのは、ただの雨ではなく、雪の混じった雨だった。

アスファルトはシャーベット状に濡れている。


「白坂さん、傘は?」

「……持ってきてないです」


30%という微妙な降水確率だからと、つい雨は降らないという方に賭けてしまったのだ。傘を持つのは手間だから。

でも、こんなことなら折り畳みの傘くらい鞄に入れてくれば良かった。先輩に、女子力の低い女だと思われる。


「それなら、家まで送っていくよ」


黒い傘を広げながら柏木先輩が私を振り返る。


「え? ……いいんですか?」
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