3度目に、君を好きになったとき

目を開けたら、沢本君の姿はどこかに消えていた。

ホッとして先輩を見上げれば、心配そうな瞳と視線が絡まる。


「あっ……、ごめんなさい、私」


傘の下で肩を抱かれていたままだった。

慌てて距離を取ると、スッと腕が離れていく。


「顔色が良くないけど、何か辛いことでも思い出した?」


言い当てられ、そっと視線をはずす。


「いえ、大丈夫です。……少し、頭が痛くなって」

「そう……。帰ったらゆっくり休んだ方がいいよ」

「はい」


おとなしく返事をしながら思う。

あの映像は何だったのか……。


沢本君の制服が、ベージュではなく黒だったから。

中学のときの忘れていた記憶かもしれない。

それともただの、いつか見た怖い夢?



「白坂さん」


私と向かい合った先輩は、傘を持っていない方の手で私の手を優しく掴んだ。

温かい感触に包まれ、息が止まりそうになる。


「不安なことがあったら、いつでも連絡して? 僕で良かったら話を聞くよ」

「……ありがとうございます」


慈しむような目差しを受け、こんな私を心配してくれている、そのことに胸の奥が熱くなるのを感じた。


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