3度目に、君を好きになったとき

お世辞とはいえ、好きな人に『可愛い』なんて言われて嬉しくないはずがない。


「お前さ、臆面もなく、よくそんなこと素直に言えるよな」


千尋先輩はもはや軽蔑の眼差しで、柏木先輩のことを横目で見ていた。


「白坂のその格好……男と出かけるからって、意識し過ぎだろ」


足元は歩きやすいようにスニーカーを選んだし、私としては頑張らない程度にカジュアルに抑えたつもり。

なのに千尋先輩は気にいらない様子だ。


「白坂さん、聞き流していいよ。千尋は天の邪鬼なだけだから」


フォローしてくれる柏木先輩は、いつもよりもさらに優しさが増している感じがする。


「大丈夫です。千尋先輩の毒舌には慣れてますから」

「……誰が毒舌だって?」


「もっと素直に、可愛いって言えばいいのにね」

「……はぁ? 俺はいつも正直だけど?」


小さく笑う柏木先輩と、目つきを鋭くさせた千尋先輩の口論がいつの間にか始まってしまう。



そういえば、未琴が他にも誰かを誘うと言っていたのは、誰のことなんだろう。

苦手な人だったら困るので、少し気がかりだ。

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