3度目に、君を好きになったとき
「美術部の先輩と行くと言ったら、交通費まで出してくれました」
どんどん熱くなっていく頬は、たぶん赤いはず。
周りにばれていないか不安になってくる。
「過保護だな、お前の親は」
呆れ混じりにそう言ってきたのは、もちろん千尋先輩で。
でも、私の顔が火照っていることには気づいていない様子。
「ま、蓮の方がひどいか。こいつ、家の人が全員厳しくて、『俺』禁止令が出されてるんだって」
「――オレ禁止!? じゃあ千尋先輩は、柏木先輩の家には出禁ですねー」
未琴が楽しそうに話に乗っかる。
自分を『俺』と呼ぶことが禁止……。
そういえば柏木先輩の一人称は、知っている限りでは『僕』のはず。
小さい頃は『僕』と呼んでいたとしても、普通はちょっと格好つけて男っぽさを出して。徐々に『俺』へと変わっていくものではないの?
「いや、出禁ではないけど。確かに蓮の家では無意識に猫かぶって行儀よくして、喋り方にも気をつけてるな」
「ぷふっ、優等生を演じてるわけですね」
「お前、馬鹿にしてるのか?」
千尋先輩はキッと目を吊り上げて未琴のことを睨んだ。