3度目に、君を好きになったとき


「――ところで。なんで千尋のことだけ、下の名前で呼んでるの?」


話題を移した柏木先輩は、不思議そうに私と未琴を見比べていた。


「えっと、それは……」


確かに千尋先輩には『伊達(だて)』という苗字がちゃんとある。

柏木先輩が疑問に思うのも無理はない。


「私が『千尋先輩』って呼び始めたから、結衣もそう呼ぶようになっただけですよ。ね、結衣?」

「うん。……特に理由はないんです」


千尋先輩との方が仲が良いからとか、そんな話ではない。

柏木先輩の場合は遠慮してしまって、呼び方を変えるきっかけが掴めないだけ。



「それなら。白坂さんのこと、これからは下の名前で呼んでいい?」

「あっ……、はい」

「僕のことも、蓮でいいよ」



そんなやり取りをしていたら、向かいの千尋先輩と目が合って、フンと鼻を鳴らして笑われた。


肘掛けに頬杖をついている未琴の方を見れば、初々しいとでも言いたげに唇を歪め、どこか大人びた笑みを浮かべている。

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