3度目に、君を好きになったとき
思えば、未琴に好きな人がいるという話は聞いたことがない。
たぶん私の勘では、隣を陣取っているところから見て、千尋先輩のことが好きなのだと思う。
もしそうなら、千尋先輩に珍しく彼女がいない隙に、二人の仲が縮まって欲しい。
大人っぽい二人は、軽口を言い合っていても、とてもお似合いに見えたから。
「結衣、これ食べる?」
隣から差し出されたのは、個包装された一粒のチョコレート。
「ありがとうございます……」
さっそく先輩に下の名前で呼ばれるなんて、かなり距離が縮まった気分で。ほんのりと頬が上気してくる。
もしかしたら、わずかでも好意を持ってくれているのかも……、と浮かれてしまう。
「蓮……先輩。良かったらどうぞ」
私もお返しにガムを手渡す。
初めて『蓮先輩』と呼んだから、緊張で変な汗が出てくる。
「ありがとう」
先輩が控えめに受け取ったとき、微かに指がぶつかってドキッとする。
特に気にしていないのか、蓮先輩の方は平然としていたけれど。