3度目に、君を好きになったとき


「これ、良かったらもらって」


蓮先輩が渡してきたのは、動物園のロゴが入った紙袋。


「え……。いいんですか?」


そっと中を開けてみると、小さなシロクマのぬいぐるみがついたチャームが出てきて、目を丸くする。


「可愛い。大切にしますね」


さっそく自分のリュックにつけてみると、先輩が嬉しそうに笑った。


「うん、やっぱり結衣に似合ってる」

「本当ですか? 私は何も返せるものがなくて……すみません」


こんなことなら、自分も先輩へのお土産を買えば良かったと後悔する。


「お返しとかは気にしなくていいよ。僕がただ、あげたかっただけだから」

「でも……」

「今日は結衣と絵が描けたから楽しかったし。また今度、一緒に描きに行けたらいいなとは思ってる」

「……はい。私で良ければ」


小さくうなずくと、蓮先輩は安心したような笑顔を見せ、背もたれに体を預けた。

それからは、しばらく会話が途切れ。

先輩の貸してくれたコートの暖かさに包まれたまま、いつの間にか目を閉じていた――。




< 96 / 182 >

この作品をシェア

pagetop