3度目に、君を好きになったとき
「これ、良かったらもらって」
蓮先輩が渡してきたのは、動物園のロゴが入った紙袋。
「え……。いいんですか?」
そっと中を開けてみると、小さなシロクマのぬいぐるみがついたチャームが出てきて、目を丸くする。
「可愛い。大切にしますね」
さっそく自分のリュックにつけてみると、先輩が嬉しそうに笑った。
「うん、やっぱり結衣に似合ってる」
「本当ですか? 私は何も返せるものがなくて……すみません」
こんなことなら、自分も先輩へのお土産を買えば良かったと後悔する。
「お返しとかは気にしなくていいよ。僕がただ、あげたかっただけだから」
「でも……」
「今日は結衣と絵が描けたから楽しかったし。また今度、一緒に描きに行けたらいいなとは思ってる」
「……はい。私で良ければ」
小さくうなずくと、蓮先輩は安心したような笑顔を見せ、背もたれに体を預けた。
それからは、しばらく会話が途切れ。
先輩の貸してくれたコートの暖かさに包まれたまま、いつの間にか目を閉じていた――。