3度目に、君を好きになったとき
もっと笑顔が見たい。

もっとそばにいて支えたい。

自分のことを見てほしい――。


数えあげれば、キリがない欲望。


彼女の健気で純粋な目が、赤く染まる頬が。

まるで自分のことを慕っている風に見せてくる。

つい、勘違いをしてしまいそうになるくらい……。



でも。過去に一度振られているのだからと自分を戒める。

これ以上、結衣のことを特別な存在だと想わないように。

結衣にとって自分は、ただの部活仲間。

自分の絵を好きだと言ってくれているだけなのだと……。


残念ながら結衣は“あのこと”すら忘れているのだから。





もしかしたら、彼女は記憶の一部をどこかに置いてきたのかもしれないと、都合よく考えて。

この旅行の前に、彼女の友人である永野未琴に確かめたこともあった。


けれど。


『永野さん。最近、白坂さんは……何かを忘れたりとか、そういうことが多くなっていない?』

『え? 健忘症とかそういうことですか? 全然、ありませんよ。いつもと変わらず、普通です。……何か結衣、変な行動とってましたか?』

『……いや。何もないならいいんだ』

『そうですか。でも結衣って。昔から忘れっぽいですからね』

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