あの日交わした約束
「大丈夫、大丈夫。」と宥は優しく声をかけ、背中をトントンした。

しばらくして落ち着いた恵美里は宥から離れると、

「皆ごめんなさい」と頭を下げた。

「何で謝ってんの?恵美里悪くないじゃん!」と豊は言う。

「そーだよ!あのクズが悪いんだ!」と徹は言った。

「このまま痛みが続いたらしばらく叩けないかもしれない…」と恵美里は弱気発言。

「そうなりゃ、そんときはそんときだべ?仕方ないって。とりあえずアイツ半殺しくらいまで絞めるしかないか?」と勝は言った。

「お前がそれ言ったら、マジで現実なりそうだからやめて」と宥は笑った。

「そろそろ帰ろうか?」と徹が声をかけて、皆は音楽室を後にしようとしたとき、

「恵美里~頑張ってるか?」と最悪のタイミングで現れた護。

皆の空気が一気に重くなり皆は護と目を合わせない。

もちろん、恵美里も。

「ん?せっかく皆の練習見ようかと思ったのに…今日はもう終わっちゃったわけ?」と何も知らない護は言う。

「護さん…あの、恵美里のこと、病院連れて行ってやってもらえませんか?」と宥は間をあけて言った。

「えっ?恵美里どしたんだよ?いきなり…」と護は肩を揺する。

「痛いです」と恵美里に言われ、すぐに手を離した護。

そこで、肩が腫れていることに気づいたらしく…

「何がどうなった?」と護は聞いた。

恵美里の代わりに宥が説明してくれた。

「…そんなことが…?よし!病院行こう。とりあえず先治療だな」と護は言った。

そして護に連れられて、恵美里は音楽室を後にした。

病院に向かう途中、何があったのか聞かれ、ここ最近起こっていることを話した。

「誰にも言えず、一人苦しんだのか?」と護に言われて

「うん」と小さな声で言った恵美里。

「よく頑張ったな。これからは先輩等にもっと甘えたらいい。もちろん俺にも甘えてくれよ?」と護は言った。

そんな話をしていると、病院に着いた。

中に入り、診察をしてもらった。

診断名は『上腕骨近位部骨折(じょうわんこつきんいぶこっせつ)』だった。

二人は聞きなれない診断名にポカーンとしている。

「いわゆる、肩骨折ですねぇ。随分派手にいったのかな?」と先生に言われ、

「骨折ですか?」と恵美里は聞き返した。

「そう。手術もあるけどね、しなくても治せるから…その代わり、時間はかかるよ?1週間は固定して安静にしといてもらわないといけない。その後は…少しずつ戻してくしかないかな」と先生に言われた。

恵美里の頬には涙が伝う。

「…私…ドラムやってるんですけど…しばらく出来ませんか?」と恵美里は聞く。

「まあ固定して安静にしないといけない1週間は絶対にダメだな。その後は…無理せず、痛んだらすぐ止めること!これを守ってもらえれば大丈夫かと」と先生は言った。

そして手際よく、固定された。

「とりあえず、これで様子見て、来週また来てもらえるかな?」と先生に言われ、病院を後にした。

車に乗ると、恵美里はずっと泣いていた。護は何も言えなかった。

「何もしてやれなかった。ゴメンな」と護は言った。

恵美里は首を横にふった。

誰のせいでもない自分の不注意による責任だと…責めていた。

護は優しく恵美里の右手の上に左手を重ねた。

「大丈夫だよ!誰の責任でもない」って。



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