あの日交わした約束
しばらくして家の前に車は止められた。

降りようとしない恵美里に、「俺が話してやるから」と護が声をかけて、恵美里は頷いて車から降りた。

護がチャイムを鳴らしてくれた。

「はーい」とお母さんが出迎えてくれて、

「ただいま」と恵美里は言う。

「護さんと恵美里?って、あなたどうしたの!?その肩…」と悲鳴に近いお母さんの声が響いた。

「んー?どした?」とお父さんも出てきた。

「ああ、護くん、いらっしゃい。上がって」とお父さんに言われ、「お邪魔します」と護は家に上がった。

皆でダイニングに着くと、お父さんが「恵美里どうしたの!?その肩…」と言った。

恵美里は無言でうつむいた。そんな背中を優しくさすりながら、「俺が説明させてもらいますので」と護は言う。

とりあえず、席について、護は一呼吸おいて口を開いた。

護は、恵美里から聞いた内容を丁寧に話した。

お父さんとお母さんは黙って耳を傾けた。

恵美里は護が話した内容にまた涙を流した。

「あら恵美里?泣かないの。大丈夫よ」とお母さんは言った。

「だってぇ…せっかくいい感じに整ってきてたのに…しばらく出来ないんだよ?」と恵美里は言い出す。

「けどな、よく考えてみ?長い将来のこと考えるなら、今は医者の言うことちゃんと聞いて安静にしてるべきだろう?もちろん皆わかってくれてるだろうし。護くんもそう思うだろう?」とお父さんは言った。

「そうですね。これからはたくさん演奏する機会も増えます。俺が全力でバックアップしますし。なので、今はしっかり休めて、安静にしていて貰いたいです。無理して悪化して将来出来ないなんてことなったら困ります。もうすぐ俺の夢が叶うんですよ?あの約束が!!」と護は言った。

お父さんとお母さんは大きく頷いた。

「そうよ?あなたのためにどれだけ護くん頑張ってくれてたか、あなただってわかるでしょう?」とお母さんに言われて頷いた、恵美里。

「そだね!お母さん、お父さん、私…」何かを言いかけた恵美里だったけど、護が優しく抱き締めて、何も言わせなかった。

護はいつものように食事をし、帰っていった。

護を送ると再び込み上げてくる涙。大きな粒が頬を伝う。

「あら?泣いてるの?大丈夫よ。泣きたいときは思いきり泣きなさい」お母さんはそう言って、優しく抱き締めた。

お父さんも来る。「辛かったな。よく頑張ってる!それはちゃんと皆わかってるから。文化祭…間に合わないとか今は考えなくていい。もちろん、間に合うならそれが一番だろうけど。護くんがこれからもサポートして機会与えてくれるだろうし、お前はプロになるんだろう?今は治すことだけを考えな」とお父さんは言って、お母さんごと抱き締めた。

二人に抱き締められて、恵美里は少し落ち着いた。
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