あの日交わした約束
「聞き慣れない診断名ついてるけど、簡単に肩骨折してるってこと?ついに、重傷者が出ちまったってことか。今までそこまで酷くならなかったのは…自らの意思で防衛してたということか…自分を守るために、何も言わず辞めてきたと?」と星光は言った。

星光のこの発言は、ほぼ独り言だった。

その時、椿の他のメンバーが現れた。

「おはよー皆揃ってるぅ~会長まで一緒じゃん!」と豊が声をかけてきた。

「みなさん、おはようございます」と恵美里は笑った。

「ここまで来て遅刻したらもったいない。そろそろ切り上げて早く中に入ろう。あ、篠崎さん、昼休み教室に行くからそのまま居てくれ。でわ、また後程…失礼」と丁寧に挨拶すると、早々と星光は去っていった。

その背中を少し見送りながら、皆も足早に校舎へと入っていった。

「はい、鞄!また後でね~」と徹が言うと、

「ずる~い!俺も恵美里の鞄持ってやりたかった~」と豊が言う。

「そーだ!そーだ!」と皆が口を揃える。

「いやー近所だったから一緒に来たのー!俺の特権?」とか徹は言っている。

「ありがとーございました。また後で」と恵美里は言って踵を返し、受け取った鞄を左肩にかけて教室に向かった。

恵美里が教室に入ると、周りには多くのクラスメイトたちが集まってきた。

「おはよー。どしたのー?その肩…」と心配そうに声をかけてくれた同級生たちに、「肩…骨折しちゃって」と笑う恵美里。

「そう、大丈夫?あ、無理しなくて良いよ。ノートとってあげるね?」等、優しい声がかかって恵美里はありがとうと言って席に着いた。

同級生の女子たちはほんとにノートを取ってくれた。

恵美里はありがとうと深くお礼を言った。

お昼になり、お弁当を持って立ち上がろうとしたとき、会長に言われたことを思いだした。

「篠崎さん!」と会長が来た。

会長を囲む知らない顔ぶれ…生徒会のメンバーであることを理解した。

会長が教室に来たため、皆は硬直していた。

「生徒会室までお願いできますか?」と丁寧に会長は言う。

「はい」と恵美里は言ってお弁当を持って、皆と共に生徒会室に向かった。

生徒会室に着くと、皆に囲まれる形で座り、お弁当を広げた。

「ワリィな。空気悪くて」と会長が言うと、

「いえ、大丈夫です。けど…まさかこんな形でここに来ることは考えていませんでした」と恵美里は本音を打ち明けた。

「今朝話してた例の件、詳しく聞こうと思ってな」と会長が言う。

あからさまに嫌そうな顔をする恵美里。

「詳しくと言っても、俺が聞きたいのはケガの経緯だ。細かいことは正直どうでもいい」と会長は言ったので、恵美里は少しホッとして、ケガに至った経緯を話した。
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