あの日交わした約束
翌朝、いつものように、恋人となった宥は恵美里を迎えに来た。

恵美里は宥に言われてほとんど何も入っていない軽い鞄を今日も持って貰うのだった。

今日からはマイバチが入っている。

それに気づいた宥は「練習復活するんだね?おめでとう」と笑いかけ、恵美里はありがとうと笑い返した。

「な、文化祭までは忙しいけど、終わったらデートしないか?」と宥は言う。

「そうですよね!せっかくこうしてお付き合いしてるんですものね!」と恵美里は笑い、二人は顔を見合わせて笑いあった。

しばらく二人で歩いてると、いつものように椿のメンバーが合流した。

「おはよう!二人とも。随分楽しそうだけど良いことあったの?」と、豊が聞く。

「文化祭までは忙しいけど、終わったらデートしようって話してた」と宥はシンプルに正直に答えた。

「いいね~」と笑う豊に対して、

「で、どうなんだよ?肩のほうは…」と聞く勝。

不器用で、ぶっきらぼうだけど、誰よりも1番心配していたのは勝だ。

「順調に回復してるって!今日からはまた復活するので、皆、よろしくお願いします」と恵美里は言った。

そうかと皆は安堵の笑顔を見せた。

皆が学校につくと、「おはよう。少し来るの遅いんじゃねぇーか?」と会長が現れる。

「あ?別に遅刻してねぇんだから良いだろ?」と宥が食ってかかる。

「そう言うことを言ってるんじゃない!遅刻してないからいい、そう言う問題ではなくだな…もう少し早めに来て他にやることがあるだろうと言っている!」と会長

「お前はいつも理屈っぽいんだよ!お前じゃあるまいし、早めに来て何すんだよ?朝弱いんだからこれぐらいで充分だろ?」と宥は半分開き直りながら言い合っている。

宥と話しているときは、普通の男子高校生の会長。皆も、また始まったくらいにしか感じていない。

恵美里は気にする様子もなく、二人の会話を楽しみながら、

「おはようございます。会長」と笑顔で言った。

「ああ、おはよ。篠崎さん、肩の具合いはどうかな?」といきなり会長モードのスイッチを入れてきた会長。

恵美里は戸惑うこともなく、普通に答えた。

「順調に回復してるらしくて、治りも早そうだって言われました。今日からまた練習再開出来ます」と恵美里が言うと、

「そうか、なら良かった。が、まあ無理はしないようにね。でわ、俺はこれで失礼する。また」と会長は言い残すと優雅に去っていった。

「相変わらずだな…」と宥は言った。

そうこうしてるうちに乗降口の前まで来ていた。

「じゃあ、また放課後に」と言って別れた。
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