あの日交わした約束
いつものように、授業が始まり、終わっていく。

お昼休みには宥が恵美里のもとに来てくれるようになっていた。

一緒にお昼お弁当を食べながら、

他愛なく趣味の話や、好きな音楽の話で盛り上がり、バンドの話等をする。

随所に出てくる会長の名前…

言い合いしながらも仲が良いことが伺える。

くされ縁だとかなんとか言いながらも、本当はすごく仲が良いのだ。

「ホントに仲いいんですね」と恵美里がボソッと言うと、

「まあな。頼ってる部分は大きいかな」と宥は返した。

予鈴がなるまで二人でたくさん話して、予鈴と共に宥は去っていった。

昼からはいつも眠い授業が続く。

恵美里は半うとうとしながら授業を受けた。

放課後になり、恵美里はドキドキ、ワクワクしながら荷物を持ち、教室を後にした。

ナゼか会長がいて、「今から音楽室行くだろう?送るよ」と言ってくれて並んで歩く二人。

「ありがとうございます」と笑う恵美里。

「朝は恥ずかしい姿を見せたな。悪かった」と会長。

「いえ。お二人がすごく仲が良いことは皆感じてますから。とくに宥さんは会長のこと、大好きで自慢してますから…」と恵美里が言うと、

会長は顔を赤らめて、そうか、 と一言いうのだった。

二人はそれ以降会話することもなく無言で歩き、音楽室についてしまった。

「じゃあ、楽しみにしとくから精一杯楽しんで」と会長は言い残すと去っていった。

呆然と立ち尽くし、恵美里は会長の背中を見送った。

しばらくして、音楽室のドアを開け、中に入った。

すでに皆は来ていた。

1年である恵美里は1番教室が遠いため、着くのはいつも最後になる。

皆は嬉しそうに歓迎した。

「大丈夫だったかな?」と宥が声をかけてくれる。

「会長が送ってくれたので」と恵美里が言うと、

「アイツ…カッコつけやがったな。何も無しに去ったのかよ…」と独り言をぼやく宥。

「さっすがぁ!星光やるなぁ」と豊が言うと、

「おい!豊てめぇなぁ、ケンカ売ってんのか?しばくぞ」と宥が怒る。

恵美里はそれにビックリして言葉も出ずその場に立ち尽くす。

「ほら、止めな。恵美里ビビってるやん。けど…あの人、ホントカッコいいね。大切なものは何を犠牲にしても守るタイプだな」と徹が言う。

「恵美里は俺らの大切な宝物。そして宥の大切なコイビトだから、あの人は全力で恵美里を守るんだよ。わかってやりなよ。あの人が1番大事にしてるのはお前との関係だって…」と祐

「そうだよ。お前はくされ縁だとかなんとか言うけどさ、あの人がイキイキしてるのはお前といるときじゃん。信頼してる、お前の頼みだから、恵美里を守る決断もしたんだろうよ。あの人の源はお前なんだよ」と勝は言った。

皆にそう言われたら、宥もさすがに言い返す言葉は見つからない。

宥は顔を赤らめて、そっぽ向き、

「せっかく皆揃ったんだから、さっさと練習始めようぜ」なんて言い出した。

そんな光景を恵美里は楽しそうに見ながら、自分のポジションについた。

久しぶりに握るバチ…緊張で手が滑りそうなほど、じっとり手汗をかいていた。
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