あの日交わした約束
音を奏でてみる。

久しぶりの感覚に、恵美里は興奮し、自由にドラムを叩いた。

激しくも穏やかなビートを刻む。

フリーに叩いてるにも関わらず、皆はそれに合わせてアドリブで合わせていく。

美しいハーモーニーが音楽室にこだました。

恵美里が叩くドラムには華があった。

宥には宥のドラムがある。

でもまた違った恵美里らしさが出た華やかさがあった。

しばらく皆はフリー演奏を楽しんだ。

フリーなのに締まるのは恵美里の卓越した技術のお陰で、皆は心地よく演奏出来るのだった。

宥は呆気に取られて、思わず拍手してしまった。

「良い!すごく良い。今のは完璧アドリブだろう?」と興奮気味に宥は言う。

皆は顔を思わず見合わせた。

「こんなことなら録音しとくべきだった…2度と同じものは出来ないだろうに…」とホントに悔しそうに宥はぼやいた。

そこにひょっこり顔を出した護

『護さん!!』と皆が声を揃えた。

「おう、恵美里の復活だからな!様子見に来た!で、どうだ??」と護は言う。

「もったいないことしました…。今まで皆、アドリブで演奏してたんですよぉ。録音しとくべきでした…」と宥が言うと、

「そっか…聞きたかったな。お前ら、もっかいやってくれないか?同じじゃなくて良いから」と護に言われて、

皆は顔を見合わせて頷いた。

護はスマホを手にして動画を撮り始めた。

恵美里がフリーで叩き始めた。そして皆はフリー演奏を始める。完全なビートに上手く重なり合うメロディー。

皆はホントに楽しんで演奏した。

スゴく良い顔をしている。

勝はスタンドマイクを持ちながら、リズムに合わせて歌うふりをしている。

歌詞はまだついていないので、こんな感じだろうという雰囲気で口パクしていた。

それが様になっている。

満足行くまで演奏した皆はホントに嬉しそうに笑っていた。

そこまでをしっかり動画で撮り終えた護は、

「ありがとう!良いものが撮れたよ。じゃぁ、俺はこれを編集しに事務所に帰る」そう言い残して、本当に去っていってしまった。

「ありがたい話だね!けど…そろそろ練習再開しようか?文化祭まで後1週間よ?」と宥に言われ、皆は改めて、文化祭で演奏する曲の練習を始めた。

しばらく練習した後、皆は下校した。

皆の気遣いで、恵美里を送ってくれたのは宥だった。
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