あの日交わした約束
そんな会話がされていることなど知りもしない恵美里は久しぶりのハルとの再会を喜んだ。

ハルに抱き締められた恵美里。

嬉しさよりも…力のこもった大きな体が…恵美里の肩を痛ませる。

「痛い」思わず言ってしまう恵美里。

「えっ?あ、ゴメン!そんな強くしたつもり無いんやけど」ハルはオロオロして言う。

「違います!実は右肩骨折してて」と恵美里が言うと、

「えっ?ほんと?ならそう言ってよぉ~」とハルは言ってすぐに離れてくれた。

「鞄持つよ!ほら、貸して?」と半ば強引に鞄を奪うとそのまま歩きだした。

「あ~あ、明日は大騒ぎだね。他校の男と抱き合ってたって…」と笑うハルに、

「ほんとですよぉ~ただでさえ、ランボルギーニの男と二股かけてるとか言われてるのに…これ以上増やされたら困ります!」と恵美里は言った。

ハルは笑いながら、「ランボルギーニの男って何?」と聞いてきた。

「芸能事務所、アクラスの社長、早川護さんよ。あの日以来ずっと気にかけてくれてて」と恵美里は言った。

「そうなんだ。話したいことはたくさんあるんだ!とりあえずカフェにでも行こう!」とハルに誘われ頷く恵美里。

二人は並んで歩いた。

しばらく歩いて小さなカフェに入った。

カウンター席が、6席ほどでテーブル席が2つ…

「いらっしゃい」と笑顔で迎えてくれるのは若いお兄さんだ。

「兄ちゃん!いつもの~」とハルは言う。

「こら!いつも言ってるだろ!その呼び方やめろって…」とお兄さんと呼ばれた店員が言う。

「いいじゃん。兄ちゃんの店なんだし…」ってハル。

えっ?ホンモノのお兄さん?と言う顔をする恵美里に、

「だいたいここに入り浸ってる。俺のお兄ちゃんの聖也だよ」とハルは紹介した。

驚きながらも恵美里は「こんにちわ」と頭を下げた。

「弟が憧れてるって言う伝説のドラマーさん?」と店員に言われて、恵美里はハルを見る。

頷いたハルを見て、私のことそんな風に思ってくれてたんだと納得した。

「ゆっくりしていってね」と優しく言うと、二人分の準備を始めた。

しばらくして、二人の前にはそれぞれコーヒーが置かれた。

それを飲みながら話を始めた。
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