あの日交わした約束
それからあっという間に、

文化祭、一部を前日に控えた日のこと…

恵美里のからだに異変が起こる。

かなりの激痛に襲われたのだ。

恵美里は痛みに耐えながら授業をなんとか終えた。

護に連絡して、迎えに来てもらうことにした恵美里はこの日の練習はお休みした。

皆が心配してくれるが、誰もどうすることが出来ない。

護に連れられ、恵美里は病院に来た。

回復に向かっていたはずの肩が赤く炎症を起こしていた。

熱量に負けた先生が、当日学校にいくことを条件に痛み止の注射を打ってくれた。

その日、なんとか護に送られて、家についた二人は中に入った。

恵美里を気遣い、護が話してくれることになった。

「お母さん、少しお話があります!」と真顔で言う護に、お母さんの顔から笑みは消えた。

中に通された二人は、ダイニングのテーブルに着いた。

すでに帰宅していたお父さんとお母さんの前に座った恵美里と護。

「どうしたんだ?そんな真顔で…」とお父さんは言う。

お母さんは緊張したようにそわそわしていた。

「単刀直入に言います!恵美里の肩の骨折なんですが…良くなっていたんですが、急に痛むと言うので病院に連れていったところ、赤く炎症を起こし腫れていました。先生も、ここまで酷くなるとは思ってなかったらしいです。多分…激しすぎる演奏スタイルのせいかと思います」と護は一気に言いきった後、深呼吸をした。

お父さんとお母さんはポカーンとしていた。

少しして口を開いたのはお母さんで。

「なんで言わなかったの?いつから痛んでたの?」と。

「違和感は少し前からあった。けど…大丈夫だろうって結構詰めて練習した。その結果、今日の朝激痛が…」と正直に言う恵美里。

「なんで休まなかった?また護くんに迷惑かけて…」とお父さんは言う。

恵美里は何も言えなかった。

苦しくて、心配かけたくなくて誰にも言えなかったことを。

「恵美里を責めないでやってもらえませんか?恵美里は心配かけまいと1人苦しみながら痛みに耐えてたんですよ。両親に言えなかったのは日にちないドラムを叩くなって言われると思ったからだと思います。メンバーにも、誰にも言えなかったんですよ」と護は言う。

頷く恵美里。

「で?どうするつもりなの?」とお母さん

「先生には許可取りました。先生が当日終了後に改めて治療を…今は痛み止めの注射を打ってもらってます。終わったらしばらく安静に完全に治るまで叩かないと言う条件つきです」と護は言った。

「そう。なら良いわ。護さん、ありがとね」とホッとしたようにお母さんは言う。

「恵美里にかけられる迷惑はどんなことでも大歓迎です。迷惑だとも思っていませんので、お父さん、迷惑だなんて言わないでください!」と護はフォローした。

「しかしだな…」とお父さんは何か言いかける。
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