あの日交わした約束
先輩と熱い抱擁を交わした恵美里は皆に声をかけていった。

そんな様子を見守るのは、護も同じだった。

「…ノブ…」最後に恵美里はノブの前に立っていた。

「ハルから全て聞いたよ。俺、お前がそこまで苦しんで傷ついてるって知らなくて…悲しい想いさせたな。何日も泣かせて…ドラム叩けないほど追い込んで…」とノブは苦しそうに低い声で言う。

「ううん。私こそ、ホントにごめんなさい。勝手に裏切られたってずっと思ってきたの。皆は許せてもあなただけは許せないって…ずっと恨んできたけど、ハルが教えてくれたから。もう大丈夫!今は恨んでないよ。私は幸せ者だね。みんなに大事にされた。そして、ノブが、私を大事に思ってくれてた…愛で包んでくれていた。今の私がいれるのは、ノブが、ハルや、皆が私を応援し続けてくれてるからなんだよね…ありがとう」恵美里はそういうと、ノブに抱きついた。

ノブはそんな恵美里を優しく抱き締める。

ノブの久しぶりに温もりを感じた恵美里は思わず泣き出してしまった。

「大丈夫、大丈夫。今のお前は輝いてるよ。誰よりも…それをこれから証明するんだろ?泣くなって」と優しくノブは恵美里に声をかけた。

そんな様子を見ていた椿のところに来ている護は

「久しぶりに逢った大切な人との再会か…いいなぁ。あれも青春っぽくてな」と独り言のように呟いてると、「ですよね」と椿のメンバーは同調していた。

複雑そうな顔をしている 宥はついに動いた。

そして、先輩方のところに来ると、

「感動の再会は終わったかな?恵美里…で、いつまでソイツと抱き合ってるわけ?」とノブを鋭い目付きで睨み付けた。

「おぉぉ。こっわ!殺気だってるやん。彼氏か?恵美里?」とノブは言うが

不敵な笑みを浮かべて、離そうとしないノブ。

お互いには火花が散っているように見えて皆は生唾を飲み、その様子を見守る。椿のメンバーは慌てて皆の方に来た。

「…あっれー、もしかして…キミ、暁宥だよね?こんなとこで会えるなんて~」と相変わらず空気読めないふりをしながら言うのは、ハルだった。

「なんだぁ。あの暁宥が、恵美里ちゃんの彼氏なんだね~」とハルは一人で勝手に納得していた。

「ハル、知り合い?」とノブが聞く。

「知り合いって言うのはちょっと違うと思うけど。俺は初対面ではないんだよね。多分宥側は初めましてなんだろうけど」とハルは言う。

この時、皆がポカーンとするなかで、恵美里だけ理解しているのか、クスクス笑っていた。

「…なっ…んで、恵美里は笑ってんだよ!」と言う宥に。

「…なんか、嬉しくて。皆が揃ってる。私の大切な人たちが」と恵美里は言う。その言葉に少し皆は照れているようだった。

そこに現れた隼人はその光景をカメラに抑えていた。

「あ?今撮っただろ?」とノブが隼人に言って睨み付ける。

「すいません。つい…皆さんいい顔してたので」と隼人は悪びれる様子は無く言った。

「ノブ~そんな怒んなって!ゴメンね~うちのノブ怖くて」とハルが言うので、

「いえ、盗撮した俺に非がありましたので、すいません」と笑顔で言ってから頭を思い切り下げる隼人。

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