あの日交わした約束
「あ、能登さん、その…フォトブック見せてくださいよぉ」と恵美里が言うこと、

「そんな凄いもんじゃねぇよ?個人で作ってるやつなんだから…」と能登

「はい!私も昨日ここで彼の作品見て、一目惚れして、初対面で友達になって欲しいって声かけてしまいました」と恵美里が言うと、

「本当か?あの彼の写真のよさがわかるとはさすが…ぜひ!その写真見たいな」と能登言うと

「案内します。3人で見に行きましょ?」と隼人は言い、歩き始めた。

恵美里と能登は並んで歩きながら、隼人の写真について話していた。

「で、貸してくださいね?ぜひ!みたいです」と言う恵美里に

「わかった。預けとくから、護さんに」と能登は言った。

写真の前に着くと、二人は声を揃えて、

「きれー」とハモるのだった。

「…これは朝日かな?」と言う恵美里に、

「…いや…夕日じゃない?」と能登は言う。

「…どちらも違いますよぉ。多分この海に対する思い入れが錯覚を起こさせてそう見せてるんです。実はこれ、正午過ぎに撮った写真なんですよ。錯覚で色んな風に見えるように、角度、アングルを考えて…セピア加工にしてあるのも、見る人の感情によって、見え方が変わるように計算してあるんです…」と隼人は得意気に解説した。

「なるほどな。言われてみたらそうかもしれない。この海の思い入れは夕方にあってそれを連想した」と能登が言う。

「私は朝日です。確かに夕方とか護さんと見た夕日とか思い入れたくさんあるけど…ドラムを叩くのを止めてた日、私は朝日を見ながら涙を流したのが思い出に強く残ってる…それがイメージとして現れたって訳ね?」と恵美里が言う。

「そうです!写真は生きてるんですよ。色んな情景があって撮られた1枚、1枚にそれぞれの想いが込められてて、見る人の心に響く…俺はそんな世界に引かれてカメラを始めた。これからも俺の作品にそんな力があって欲しいと心から願ってる」と隼人は言う。

「…いいねぇ。好きだよ!俺、そーゆうの。ま、社長の許可おりたし、ウチでプロカメラマンなりなよ?もちろん、サポートはさせてもらうよ!名刺渡しとくし、いつでも連絡してよ?」と能登は言って名刺を隼人に渡した。

そうこうしてるうちに、いよいよ、恵美里たちの出番が来た。

そして、「恵美里~そろそろ準備するぞ~」と皆に声をかけられ、恵美里は準備を始めた。

「さてと、俺も準備すっかなー。篠崎さんにカメラマンお願いされてるから」と隼人が言うと、

「俺も準備するよ。今日は皆にとってとても大切な日だからな個人カメラ回す予定だから」と言って能登もスタンバイを始めた。

舞台袖に移動したメンバーを他所に、

宥、護、能登は良い席を確保していた。もちろん、恵美里の主治医も。

その近くには先輩らも見守っている。
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