あの日交わした約束
「あの頃は、お世話になりました」と能登は言った。

能登によると、昔開催した展覧会で出逢い、その後、少し話をしてお父さんとの会社と仕事をしたことがあったらしい。

恵美里はそのことを初めて知った。もちろん皆が初耳だったわけだけど。

そうかとお父さんは笑う。

その展覧会とは安西隼人の個展のことだった。

企画し、プロデュースしたのが、アクラスに入る前の能登だったので、随分前のことだけど。

「どおりで、俺が知らん訳ね。お前がまだうちに来る前のことやったかー」と納得したように、護は言った。

「フォトブックなんですけど、恵美理さん、プレゼントしますよ。お父さんもファンみたいですし、二人で楽しんでください」と能登は言う。

「いいの?能登さん大切なやつじゃないんですか?」と恵美理が言うと、

「俺は別冊も作ってる。それに、あの子、多分ウチくるよ。俺の目に狂いが無ければ」と自信満々に能登は言うのだった。

「どこからその自信は来るんだ?」とお父さんが聞けば、

「何でしょうね」と笑う能登

「まぁ、俺が能登を信じてるのもあるし、深く買ってるからなぁ」と護は笑うのだった。

そんなことを言いながら、楽しくみんなで食事を楽しんだ。

護より、熱のある男、能登に熱くて、濃い話を聞かせて貰えて、恵美理は笑っていた。

音楽への熱は誰にも負けてないと思ってた。

けど、護や、能登はそれ以上に熱かった。

恵美理は楽しすぎて、あっという間に時間が過ぎていった。

そして、そろそろ帰るわと護と能登は帰って行った。

大興奮している娘、それを楽しそうに両親は見守った。

「恵美理、しばらくゆっくり過ごしなさいね。無理しなくていいから」とお母さんに言われて、恵美理は肩の痛みを思い出した。

「ありがとう、お母さん」と恵美理は笑った。
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