あの日交わした約束
翌日から、文化祭に向けての本格的な練習が始まった。

最初は中々合わなかったが数週間一緒に過ごして、一緒に練習して次第に合うようになってきた。

夏休みに入り、一緒に過ごす時間は長くなり、ずっと一緒に練習した。

恵美里はどんどん意見を言うようになり、同じ曲でもいくつのオリジナルを加えたバージョンが弾けるようになっていた。

それは皆も同じで、演奏の仕方も少しずつ変わっていった。

そんな様子をいつも楽しそうに宥は見守っていた。

練習が終わり、皆で下校する。それが当たり前になり、周りからも認知してもらえつつある。

いつのまにか、宥と恵美里はかなり親しい関係を築いていた。

お昼も一緒に食べることが多くなり、お互いの教室を行ったり来たりしている。

夏休みが明けたとある日ー

恵美里は昼休みに、宥のもとを訪れていた。

「あの…暁先輩いますか?」と2年の教室で声をかけた恵美里。いつもより緊張していてつい、苗字で呼んでしまった。

「おー、宥!彼女が来てるぞー」なんて先輩の冷やかしにはほぼ無反応の恵美里。

「あ?恵美里?どしたの…?とりあえず場所異動しよっか」と宥は教室を出てきくれて、二人は少し廊下を歩いた。

無言の恵美里。横を歩く宥も少し緊張しているように見える。

屋上について、やっと二人は深呼吸をする。

今まで呼吸を止めていたかのように…。

「で、どしたの?何かあった?」と宥は言う。

「多分イジメられてる気がする」と恵美里は話した。

伝説のバンドと言われ続ける、椿にはドラマーになるひとを苦しめる、人物が存在する。それが、宥が話していた、初代のドラマーだ。

事実、今までイジメというものを経験したことない恵美里にとっては苦でしかなかったし、悔しかった。

どーして良いか自分でもわからず、宥に相談することになった。

宥は優しく恵美里を抱き締めた。

「大丈夫‼俺が何があっても守る!キミは俺らの宝物だから」と宥は優しく声をかけた。

頷く恵美里。

「で、具体的にはどんなことがあったのか教えてもらえる?」と宥に言われて、経緯を話した。

「そっか。苦しかったな。よく耐えたよ!アイツ(生徒会長)に話しとくし、後は…任せよう?アイツが絞めるだろうからな」と宥は言った。

アイツこと、生徒会長、野間星光は宥が尊敬する偉大な同級生で幼馴染。3年生を差し置いて、2年生にして会長へとなった人物。

しばらくして、予鈴がなり、ふたりはそれぞれの教室へと戻った。

教室では一般人の恵美里は特にいじめられるといったこともなく平穏に過ごしていた。

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