女嫌いのイジワル上司を攻略します!
話にキリのいいところで私は自分の席をすっと抜け出して、瓶ビールを手にバクバクと鳴る心臓を抑えながら、倉西さんのもとへ向かった。
「...お疲れ様です」
倉西さんの隣にすっと座って挨拶すると、
「おう。」とだけ言われて全く私の方を見ようとはしてくれなかった。
「倉西さん。お酌しにきました...。」
私がそう言うと「ん。」と冷たくではあるけどグラスを差し出してくれた。
とりあえずビールを注いで、「すみませんでした」と謝ると、
「なにが?」と冷たい返答があったのち、倉西さんのクールな瞳ががっちりと私を捉えた。
「迷惑をおかけしてしまって...。
体調管理もできてなかったのに、営業に付いて行ってしまって。本当にすみませんでした」
私の言葉にしばらくの沈黙が流れて、周りの人たちの声が遠くで聞こえるようなそんな感覚に陥る。
「そんなんじゃ許せねぇな」
やっと口を開いた倉西さんは、やっぱり私を許す言葉を口にはしてくれなかった。
そりゃそうだよね。
すごく迷惑かけちゃったし。
新ブランドの大事な1部品をかけた重要な営業だって倉西さんは言ってたのに、そんな大事な取引先で倒れちゃうなんて...。
自分のした事がやっぱり大きな失態だったことを改めて実感して落ち込んでいると、
「なんでお前は俺に言わねぇんだよ。
俺はお前の直属の上司だろーが。」
と倉西さんが口を開いた。