異世界平和はどうやら私の体重がカギのようです~転生王女のゆるゆる減量計画!~
「…… でしょうか?」
私がひとり、腕組みしてうんうんとうなずいていれば、アイーダが横で何事か小さくつぶやく。けれどそのつぶやきは小さくて、よく聞こえなかった。
「ごめんアイーダ、なんか言った?」
振りかぶり、見上げたアイーダは難しい顔をしていた。
「アイーダ?」
けれど、私と視線がぶつかると、アイーダはハッとしたように、浮かんだ険を引っ込めた。
「いえ、なんでもございません。それよりも姫様、そろそろ午後のプールのお支度をなさいませんと、遅れてしまいますわ」
「あ、ほんとだ! じゃあアイーダ、私の棟はこっちだからここで!」
柔和な笑みで続けられた台詞に、今度は私がハッとする番だった。私は大慌てでアイーダに背中を向けると、大きく一歩を踏み出した。
「姫様、ライ・ザック殿にお渡しするランチボックスをお忘れですわ!」
「そうだった!」
「午後もがんばってくださいませ」
「うんっ!」
私はアイーダに持ってもらったままだったランチボックスを受け取ると、今度こそ駆け出した。